きみのこと



大切で大好きでしかたないんだ









だから、今日は。





















「っっっっっっだーーー！！！！！

なんでこんなもん作んのがこんなに難しいんだよ！」







４/１９。

記念すべき１５才の誕生日の前日。



オレは、自宅の台所で絶叫していた。



理由は簡単。

ケ　ー　キ　が　膨　ら　ま　な　い　か　ら　。









せっかく、





オレが作ったケーキであいつの度肝を抜いてやろうと思ってんのに。









自分の誕生日に、逆にプレゼントなんて、ドッキリだろい？

























ちなみにあいつってのは、お隣さんで、幼馴染で、甘いもの好きの同志で、









うっかりオレが好きになっちまったやつ。





















まだ告白なんてしてないし、されてないし

でも、両思いなのはなんとなくわかってて。



だから

今、一生懸命ワナをしかけてる。







どうせならあっちから言わせてーだろい？

















『ほら、』

(ぽいっと無造作にケーキを渡すオレ）

『え？何これ…ケーキ？もしかして、ブン太が作ったの！？』

(感激する)

『フフン。天才的だろい？』

(オレ、夕日をバックにキラキラ(笑)）

『でも、あたし、こんな素敵なものもらっても、ブン太に返せるようなもの何も持ってない！』

(嘆く。その肩をそっと抱き寄せるオレ）

『気にすんない。オレは、見返りを求めてるわけじゃねえ』

(おーっと、オレすっげー男前じゃね？)

『でも…っ、それじゃあたしの気がすまない！』

(オレの手を振り払って泣き出す)

『折角ブン太の誕生日なのに、私ばっかり幸せなんだもの…』

(…ちょっと乙女にしすぎか(笑)）

『ばーか。いまさら物なんかいらねーよ。そんなことより、かっちょいいオレに、何か言うことがあるんじゃねーの？』

(オレの胸に飛び込んでくる)

『ブン太、好き……っ！』

『バーカ。んなこと、とっくに知ってるっつの』

(夕日をバックにシルエットの二人が重なっていく)

(同時に筆記体の文字がフェードイン)





〜ＦＩＮ〜





（いやいや、さすがにそれはおかしいだろい）























「ふわー〜あぁぁ…。変な夢見たー………」

現在、絶好調寝不足中。

朝練の時は(ジャッカルが)怒られて

一時間目二時間目は爆睡。

三時間目はうるさい先生に廊下に立たされて

四時間目は適当に手を抜いて体育して

五、六時間目はもう諦めて部室で寝てた。

放課後の部活は睡眠不足のせいかはたまた緊張のせいか得意技もはずしまくって

怒った真田に、ジャッカルと一緒に走らされた。



誕生日にしてはなかなか最悪な一日だけど

いいんだ。勝負は帰ってからだし。

部活終わってから、直接家に行けばいい。

最後に勝てば、それでいいんだよ。

……さすがに、今日見た夢なんかはやりすぎだったけど



カバンの中の、唯一ふんわり焼けたケーキを思って、にやりと笑った。



































今日は、朝から幼馴染のアイツを避けて避けて避けまくってやった。

アイツ半分寝てたからそんなことには気付いてないだろうけど。

ごめんね。知ってるんだよ。

アンタが私のこと好きなことだとか

私がアンタのこと好きだって知ってることとか

…私のほうから告白させたいこととか。





たぶん、昨日遅くまでごそごそやってたから今日中に何かしら仕掛けてくると思う。





思い通りになってやる気なんかさらさら無いけど、

せっかく誕生日だし、いいタイミングだし、

そろそろ一歩進んでやってもいいかな。なんて。





廊下で大あくびしてる赤頭を眺めた。

























放課後。

家に帰って準備を完璧に仕上げてみる。

大丈夫。

ケーキはキレイに焼けた。

ご飯もおいしそうに盛り付けられた。

親は私だけ置いて温泉旅行とか都合よく行ってるし

普段はしないようなお化粧だってうすーくだけどちょっとやってみて





















時間はちょうどいい具合。













そろそろ、アイツん家に着く。



そろそろ、アイツが家に着く。











あぁ、どうしよう。











柄にも無くドキドキする。



















あえてここで終わるのかよとかブン太変な夢見すぎだよとか
ブン太の誕生日から何日経ってると思ってんだよとか
誰もそんな突っ込みは求めてません。
とりあえず純粋にかわいそうだと思ってあげてください(※穴谷の頭を)