疲れた時には甘いもの。



















そういうわけで(?)部活が終わってから神尾に誘われた伊武と橘と三人、ある喫茶店へとやって来た。









「…なんで俺まで…行きたきゃ二人で行けばいいのに…。」

「…神尾」

「何ですか橘さん?」

「ここ…俺達には場違いじゃないのか?」









周りを見渡すと、ヒラヒラカーテン、ピンクのテーブルクロス、極めつけにハート型の椅子。

しかも女の子同士かカップルしか見られない。

何人かがちらちらと好奇心旺盛にもこっちを見ていた。









「…普通男同士でこんなところに来るはずないし…またあの娘を見に来たんだな…しつこいな…。」









居心地悪そうな橘に「まぁまぁ、今回だけですから」と、落ち着かせていた。









「橘さんがこういうの嫌いなの知ってるくせに…酷いよね、神尾って。
まぁ…いつもは二人で来てるんだけど毎回毎回二人っきりだとイヤな噂がたったりするからさ…
ホモカップルとか…。それがイヤだったから今日は何も言わずについて来たわけなんだけど
…別に俺がついてくる必要なかったんじゃないか…?」








伊武がぶつぶつぐちぐち言っているがいつものことなので聞かないことにした。








「!!来た!」








神尾は立ちそうになるのを堪え
欠伸しながら出てくるウエイトレスの彼女に神尾はニヤニヤしながらモジモジしている。








「ていうか…仮にもウエイトレスなら欠伸しながら来たらダメなんじゃないの…?
そしてアキラ…毎回キモい。」








彼女は気だるそうに水を持ってやって来た。

いつも通り中身はぬるそうだ。








「ふぁー…注文は〜?」








大きな欠伸をしながらメニューと水を置く。

よく見ると涎の跡が見える。

寝てたのか。








「せめて手で隠そうとか…思わないんだろうな…。」







そんな彼女に神尾はメロメロ(死語)状態。

確かに顔は可愛いかもしれないが…こんな女のどこがいいんだろうか。








「あっと…すまない
こういうところに来たことないからどういうのを頼めばいいのかわからないんだが…」








逆に硬派っぽい橘がよく来てたらそれはそれで怖い。

苦笑しつつ神尾に任せると、メニューを閉じる。








「そうですか?じゃあたまには…あんみつ三つ!」








笑顔でそう告げた神尾。

しかし、何が気に食わなかったのか彼女がいきなりメニューで神尾の頭をおもいっきり叩いた。








「な、なにする…」

「ここの喫茶店に来て和風の物を頼むなんて邪道!パフェにしないかパフェに!」









ウエイトレスが客にいうセリフじゃない。

実際周りの人達もあんみつや団子などを頼んでいる。

しかし、彼女に目が眩んでいる(?)神尾は何故か謝り、パフェを三つと言い直す。








「はーい。んじゃパフェ四つね」

「いや、パフェは三つなんだが…」

「パフェ四つ入りマース」







橘の制止も聞かず厨房に入っていくウエイトレス。








「な、なんなんだアイツは?」







自己中心的にも程がある。

呆れる橘に顔を緩ませニヤニヤ笑う神尾。








「可愛いでしょ!?秘密なんですけど…橘さんにだけ教えますね!」







あまりいい予感はしないが、とりあえず部長として
部員のことは知っておいたほうがいいだろうと橘は耳を傾ける。








「俺、あの娘が好きなんですよー。」







そんなん見てりゃわかる。

言いそうになりながらもグッと堪え「そうなのか」と、知らない振りをする。








「で、あの娘ちゃんって言うんですけど、可憐で可愛いっすよね!」

「可憐…。」








そんな言葉を微塵も感じさせることなく去って行った彼女。

恋は盲目とは言ったものだ。








「そうか…まぁ頑張れよ。」









人の色恋沙汰に口を出す程野暮じゃない。

と言うかぶっちゃけ関わりたくないのかもしれない。

爽やかな笑顔に騙された神尾は「ハイ!」と元気よく返事をした。

















一時間がたった。









「ちょっと…遅いんじゃないか?」









橘は居心地の悪さも手伝ってか遠慮がちに神尾に問い掛けた。









「え?あぁ、いつもこんなもんですよ」

「…言っとくけど…今日は払わないからな…毎回毎回付き合ってたらキリがないんだよな…。」









へらへら笑った神尾に釘を刺すように伊武がぼそりと呟く。









「わかってるって、ちゃんと払うつーの!」

「なんだ、神尾。もしかしていつも払ってなかったのか?」

「いや…払ってるんですけど…割り勘で。」

「…割に合わないんだよ。」

「お前、あの時何も言わなかっただろ!?」

「ふ〜ん…何も言わなかったからってあれだけの金額払わせるんだ…
ありえないよな…」

「おい。喧嘩はするなよ。今回は俺が出してやるから」










仕方がないと苦笑する橘。

二人は言い合ったら中々引かない。

両方我が強いせいだろう。








「いや、いいですよ橘さん!
今日は俺がついて来てもらってるようなもんなんですから!」

「全く…アキラには困るよな…」

「まぁ、たまにはいいだろう。気にするな。それに甘いものって言ったのも俺だしな」

「……まぁ、橘さんがいいなら…」







と、二人は顔を見合わせ申し訳なさそうに頭を下げた。

と、その時。








「ヘイ★お待ち!」








彼女がパフェを皆の前に荒々しく置いていく。

口の周りに大量にクリームつけて。

もうどうツッコミいれたらいいのか。

怯む橘を余所に神尾と伊武は動揺するような様子は見られない。









「ふぅん…今日はちゃんとパフェが乗ってるんだ…」

「は?」

「いつもは空の状態だったりしてるからなー」

「は?」









普通に繰り出されている会話だが内容が明らかにおかしい。








「いや…お前等、まだ他に言うことがあるだろう。」

「え?別にないですよ。」

「…今更だし。」









二人の平然とした返答に橘はがくっとうなだれた。








「いいからさっさと食え」








何を言っても無駄か。

特に元凶であるに言ったところで聞くわけがないことは注文の時に実証済だ。

渋々口に運んだパフェは甘い筈なのにほろ苦く感じた。















とりあえずどうにかこうにか食べ終わり、
どこをどうみたらそう見えるのだろうと思えるへの賛辞を耳にタコが出来そうなほど聞かされ
気がつけば閉店時間。

橘が部活よりも長く辛く感じたのは気のせいではないだろう。

こっそりとため息をつき、会計に向かう。

レジに立ってたのはやはりと言うかだった。

伝票を渡すと素早くレジに叩き込む。

初めて感心したのだが…








「ありがとうございまーすー合計で九千七百六十円でーす」

「はぁ!?」







財布から五千円札を取り出そうとした手を止める。

パフェは一つ七百八十円。

初めに四杯と言っていた為、(何故か)が一杯分食べたところで三千円ちょっとの筈。








「よかったですね!橘さん。一万いってないですよ」







テンション高く告げる神尾の言葉にいや、それは当たり前だろうとツッコミを入れたい。








「ふぅん…今回は珍しいことだらけだよね…いつもは一万は軽く越えるからなぁ…」










ぼそりと呟かれた伊武の言葉にオイ。待てとツッコミを入れたい。

しかし、入れたところでそれが当たり前になってる今の二人には何の言葉だかわからないだろう。

…ガットの張り替えとテープ代だが仕方がない。

橘は一万円札を取り出し、に手渡した。









チーン★








「一万円お預かりしまーす。お釣りは頂戴しましたーあっりがとーございやしたー」

「お前…いや…もういい…。」








ニヤニヤした笑みがなんとも言えないが、不思議に憎めない。








「じゃ、またな!さん」

「じゃ…もう来たくないけどね。」

「おう、じゃーねリズムに呟き君。」







ひらひらと手を振り、橘を見る。

今まで見ていたニヤニヤした笑みではなく、人懐っこい笑み。








「また来てね。」








一言だけだった。

だけれど、なんだろう。

彼女の笑みに

胸が熱くなったのは。











「橘さん、今日はごちそうさまでした!」

「ん…?あぁ…。」

「…どうかしたんですか…?」

「いや。」










『きっと気のせいだ。』





そう呟き、暗くなった空を見上げた。



もう行きはしないと思っていた喫茶店に再び誘われるかもしれない。



もしかしたら…行ってしまうかもしれないな。



思って、橘が苦笑したのを見て神尾と伊武は不思議そうな顔をしたのだった。


























気が付いたら橘さん寄りになったましたが
特にそんな意識はしてませんでしたが何か?(ん?)






☆戻った方がいいみ隊☆





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