脳裏に浮かぶのは、底抜けに綺麗なえがお



いろんな、複雑な感情を昇華した、そんな顔



いつまでも、それをみていたかった



誇らしく、誇らしく、嬉々として、



きみをこの胸に抱いて生きたかった















だれよりも、ちかくで





























日が落ちて闇も深くなってきた、住み慣れた部屋の中で



見た目に色鮮やかな、けれど確実に微量の毒を含んだ液体を一息で飲み干して



空のグラスを乱暴に、叩きつけるように置いた



なんて滑稽なんだろう



なんて、無様なんだろう



アルコールに依存するつもりは毛頭ないけど



けれど、今この瞬間、これがないと至極辛くて



自棄になって、再度なみなみと注いだそれを、一気に飲み干した。



酔いたくて



酔いつぶれたくて



…すべてを忘れてしまいたくて















『オレ、海外にテニスしに行く』













愛しい声から電話で告げられたそれに、



さびしい、なんていえるわけない



つれてって、なんて、もっといえない



荷物になんてなりたくない



知ってる、よ?



君がそれに向かって一生懸命頑張ってたのも



君にとって、これがものすごいチャンスなのも



これが、君にとっての、決定事項だってことも



しってる。



だから、言ったでしょ



ねぇ、言えたでしょ?



泣かずに、取り乱さずに、無様に追いすがったりせずに



「いってらっしゃい」

まだ、おめでとうとは言えないけど



「いってらっしゃい」



まってる、なんて、可愛いことも言えないけど



「いってらっしゃい」



ただ、送り出すだけならできるから



「ぃってらっしゃ…っ」



鳴らない携帯を握り締めて、私は独り静かに泣くから



だから、お願い



無慈悲な優しさだけ、置いて行かないで









「やっぱり泣いてた」





カタン



微かな音と共に、後ろに現れる慣れた気配。



乱れた呼吸に、少しだけ胸が詰まる。





…お願い



突然現れて、そうやって、私にぬくもりを残さないで



また、想いが深くなる



もっと、想いが重くなる



どうせ去っていくのなら、冷たく捨て置いてほしかった









背中に感じる、触れ慣れた体温に、







――――ぽたり







余計に涙が溢れた。











-END-















悲恋なのかこの後幸せになっちゃうのか何なのか。
つか…相手は誰だ(聞くなよ)








●戻り隊●

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