火照る頬に回る思考。
やっと気付いた。
オレってあの人が好きだったんだ。
ネツ
その日の午後、いつも通り部活をしていたオレは、唐突に意識を失った。
(あー…今日カルピンの餌買って帰る予定だったんだけど……)
なんて、どうでもいい事を考えながら。
…誰かの笑い声と、怒り声が聞こえた気がした。
目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋…ではなく部室だった。
しかもやけに背中が痛い。
起きあがってみると、オレの下には自分のジャージが敷かれてあった。
どうやら部室の床にジャージごと転がしただけらしい。
…せめて保健室のベッドくらい使わせてよ。
ぼんやりする頭を軽く振ると、何となくくらりとくる。
ふぅ…
小さくため息をついた。
その瞬間。
「やあやあようやく起きたね一年坊主」
扉が開き、逆光の中を見覚えのある人物が突き進んできた。
「何で、アンタが…」
偉そうに現れたのは、最近意味不明にウチの学校に入り浸ってる女だった。
何者なのかは誰も知らない。
学校も、年も、連絡先も。
知ってるのは偽名かもしれない名前と、性別と、ウザいほどの甘党なことだけ。
突然、本当に唐突にコートに現れて、
奇声を発しながら手塚先輩と乾先輩の眼鏡を鼻眼鏡に交換して逃げ去ったあの日のことは、
きっと生涯忘れられないだろう。
(ちなみにその後眼鏡を返しに来た時にグラウンド50周走らされてた)
何だかそれが縁で最近よく現れるけど、オレ自身は話した事なんて数えるほどしかなかった。
「いやー、いつものごとくうろうろしてたらインテリ眼鏡に怒られてさぁ。
暇ならちびっ子の看病でもしてこいってさ。
私は家政婦でもマネージャーでもないっつの、ねぇ?」
なんて一人でガンガン喋りながら手際よく濡らしたタオルを絞ってオレの額に押しつけた。
「っめた…」
氷水か何かで冷やしたのだろう。それのあまりの冷たさに、思わず目を細めた。
「ありゃ。そんな冷たかったー?ごぉめんごめん」
ごくごく軽く、しかも何故かオレを叩きながら謝る。
「…痛いっスよ」
ささやかな抵抗を試みてみるも、効果は得られず。
むしろエスカレートした気がする。
「いやんもう照れておらっさるわうほほほほ!
かーわーいーいー」
ヘッドロックをかけた状態で頭をぐりぐりなでられる。
……ちょっとヤバいんじゃないの?
少しどころじゃなく呆れて、斜め後ろにある顔に目を向けた。
あれ?よく見たら
「目が…赤、」
「うっそマジで!?
うっかり目から青春の汗を流してたなんてヲトメの秘密は知っちゃダメだCー!!!」
手加減なしでガクガクと力いっぱい身体(主に頭)を揺すられたオレは、
不本意ながら本日2度目のブラックアウトに陥った。
『アンタでも泣きたくなることがあるんだ?』なんて、嫌みの一つも言ってやろうと思ったのに。
クソ。
頭に血がのぼる。
世界が回る。
けど、おかげで気付いた。
オレ、この意地っぱりで変な女が相当気に入ってるんだ。
だって、泣いた理由とか、泣かせた相手とか、知りたくて仕方ないんだ。
ああもう…自分の気持ちを持て余すなんて本当にありえないし。
『越前の様子、どうっスか?』
『いやぁ、それがうっかり気絶させちゃったのさね』
『いくらおチビが可愛いからって、少しは手加減しなきゃダメなのにゃー』
『いや、わかってんだけどつい、さ』
『“つい”なーんだよー』
『いや、目が赤くなってるのを指摘されちゃってね。
深く突っ込まれたら、あれを話さざるを得なくなるじゃん』
『あぁ…あれはさすがに……』
『“越前が熱射病で倒れたのを見てとっさに吹き出し、それを手塚に怒られたことで余計ツボって
笑いすぎでむせたので涙が止まらず大変でした”ってありのまま話せばいいじゃない』
『……さすがに人が倒れたの見て大笑いしたなんて可愛いチビっ子に言えるほど図太い神経は持ち合わせておりませぬ』
『へぇ…。初耳だね』
夢うつつで聞いた気がした会話。
何かぼんやりして頭が働かないから、夢か現実か今でも分からないけど
とりあえず、元気になったらカマかけてみようと思った。
追伸
ごめん。
あの時思ったのって間違いだったかも。
やっぱ、熱に浮かされてただけじゃないかって思うんだよね。
だから、アンタを見た瞬間心臓が跳ねるなんて、今はまだ知らないフリ。
アンタもオレも、まだまだだからね。
−終わってみた−
オチなしです第2弾。
名前変換もなしです以下同文。
自己申告万歳以下同文。
手抜きじゃありません(キッパリ)
何か、前回のと主人公が同じ気がしますがどうなんでしょう?(聞くなよ)
戻ってみちゃい隊
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