「私さぁ…日吉をいじり倒し隊に所属したいんだよねー…」

「…………は?」





それはこんな一言で始まった。







入隊希望日和。







天下の奇人変人集団氷帝男子テニス部レギュラー陣を呆気にとらせたこの女。

はっきり言って、この部には何の関係もない。

マネージャーでもなければ選手でも顧問でも、ましてやウチの生徒ですらない。

ある日突然コートに現れてあの跡部先輩を問答無用ではり倒し、

更に忍足先輩を大声でオタク呼ばわりした挙げ句に眼鏡を遠くに放り投げ、

その後一週間見事に逃げきったという逸話の持ち主だ。

なんでも、友人との罰ゲームだったとかいう話だが、それにしたってろくでもない。

正直、かかわり合いになりたくない人物だ。

………が。

「ねーえー、ぴよしってばー」

何故俺を放っておいてくれないのか。

背中にずしりとかかる重みを払いのけながらため息をついた。

「むー。ぴよし冷たーい」

何やら跳ねている気配を感じるが、気にしたら余計まとわりつかれる羽目になるので無視することに決め、

空いているコートで軽く練習するために部室のドアを開けた。







「…で、その何とか隊って何やの?」

いち早く立ち直った忍足が問いかけてきた。

正直、日吉に逃げられたのが切な愛おしくて、

その乙女(笑)的な余韻に浸るためにはヤツの質問に答えるのがクソめんどくさく思える。

「あー…ファン倶楽部?」

「いやいや、何で疑問系やねん。しかもクラブが漢字表記な意味がわからん」

いちいち細けぇトコに突っ込むなよエセ関西人。

みみっちいな。

「……先輩、心の声がだだ漏れですよ」

「あら?」

鳳さん(なぜかさん付け)に突っ込まれたことはとりあえずスルーして、

ぼんやりはんなり斜め上を見上げながら口笛を吹いてみる。

皆単純だから、きっとこれで誤魔化せる。ええきっと。

「誤魔化せるわけないじゃないですか。アホですね。アハハ」

そんなハッキリキッパリ爽やかに言い切られたら辛いじゃないですか。

少しはあたいの意を汲んであげてよ!

つか、心読みすぎじゃい!

何だかんだと一生懸命反論を心の中で訴えていると、ずしりと背中に変な重みが現れた。

「なぁなぁ、何とか隊って他にも何かあんの〜?」

おぉ!

この程良い子供体温&間延びした喋り方は!

「ジロさん!うほほほほ!!顔近!やっべ!あたいよだれが…

あ、いやいや、何でもないから気にしないデー」

周囲の人々がドン引きしてるのを何となく肌で感じながら、とりあえず顔だけ平常心を取り戻してみた。

「………」

やっぱダメ?

やべぇよ。

そろそろ吹き出しそうだし。

変な沈黙ってやたらウケるんだって!

「あははは!マジすっげー!やっぱお前ちょー面白いC!」

…ありがとうジロさん。

あたいあなたのそんな変なとこ愛してる。

「あー…、感激してるとこ悪いんだけどさ、さっきのジローの質問にいい加減答えてミソ?」

出たなミソっ子。

可愛いんだよバカ野郎。

「他にどんなんがあるかってやつー?(ニヤ)」

「お、おう…」

あたいの極上の笑顔に気圧される岳人。

微妙に変な汗がたれてるのは見なかったことにして、一枚の紙を取り出した。

「これは…!」

そこに綴られた文字を目にし、少年たちは驚愕の声を発した。





・日吉をいじりたおし隊

・アホ部のほくろを押してみ隊

・忍足の眼鏡を叩き割り隊

・ジロさんの寝顔を観賞し隊

・ジロさんの寝顔に落書きし隊

・宍戸さん(長髪)の髪をいじり隊

・ガクソはとりあえず弟にし隊

・鳳さんはやっぱり宍戸先輩にラ部







あたいの入隊(入部)希望のトコのリストである。

すべてドッキリでどれにしようか迷う迷う。

どうせなら本人たちに意見を求めてみようか?

ふと顔を上げると、なぜかそこには不穏かつ微妙な空気が流れていた。

「ほくろ…。よりにもよって注目したのがホクロかよ…」

呆然と呟いている跡部。

「眼鏡とか、叩き割られたら修理に金かかるやん…」

全く別なことを心配している忍足。

「…Zzz」

力つきて寝たジロさん。

「宍戸さんの髪は渡しませんよ!」

違う所に怒る鳳。

「所詮弟…」

いじけてしゃがみ込んだ向日。

「……部………?」

ただただポカンとして、思考が働いていない宍戸。

誰に話しかけてもまともな返事が返ってきそうになかった。

……仕方ない。

ジロさんの隣で安らかに眠ろう。

「ヒヒッ」

奇妙な笑いを一つだけこぼして、私は睡魔に身を委ねた。









「暑…」

それなりに充実した練習をした俺は、タオルを取りに部室へと戻ってきた。

が、何となく嫌な予感におそわれ、扉を開けることを躊躇する。

まさかまだあの人が中にいるのだろうか?

声はしない。

おそるおそる隙間から中を覗いてみる。

「…………」

扉の向こうは異空間だった。

タオルは諦め、静かに戸を閉める。

ため息はしばらく止まりそうにない。





−終わった−













オチなしです。
名前変換もなしです。
自己申告万歳。
とりあえず、アホ主人公大好きなので頑張ります(?)




戻ってみちゃっ隊




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