『あっしたー!(※ありがとうございましたの意)』

約200人が声を揃えてコートに一礼。

今日も、キツい部活の時間が終了した。

一年生が後片付けにと走り回っている中、俺は人を探していた。

「さっきまではいたのにどこに行ったんだろう…。」

探してる人はいつもふらりと現れ必ず何かしてふらりと去っていく彼女のこと。

何かとは前触れもなくしばき倒したり、眼鏡を叩き割ったり等様々。

まるで天災のような人だ。

宍戸さんとラリーを続けているとき確かにいつものニヤニヤとした笑みを浮かべ、こちらを見ていた。

絶対に何かある。

人を疑うのは好きじゃないけれど、彼女に至っては別問題。

何もないことなんてある筈が無いと確証を持てる。

「おい、長太郎。なーにキョロキョロしてるんだ?」

「あ、宍戸さん!さっき彼女がいたんですよ。」

「彼女って…あいつか?あいつ以外思い浮かばねーけどな…。」

重い息を一つ吐く。

今まで氷帝のテニス部員は彼女に何かしらされている。

ちなみに宍戸さんは髪が長いときにいつの間にかみつあみにされていたし、

短くなってからは帽子からはみ出る髪を引っ掴まれた。(しかも数本抜けた)

俺は俺で髪の毛を黒く見せるスプレーを吹き掛けられたり、

宍戸さんの近くにいたら「やっぱり…ラ部ね…」と、わけのわからない言葉を囁かれたりしていた。

勘弁して欲しい…。

「話を聞かないところ、まだ、被害はないみたいですけど…。」

「だよな…。それにあいついつも奇声上げてるからわかるしな」

俺と宍戸さんが苦笑し合った時

「おーい!宍戸、鳳。」

ぴょんぴょん跳ねながらやって来たのは向日先輩。

「今からラーメン食いに行かね?」

「お、いいな。」

「え!?宍戸さん?」

話に乗りそうな宍戸さんに目を丸くする。

彼女を見つける方が先決じゃないのか?

俺の考えなんかお見通しなんだろう宍戸さんがニッと笑いながら俺の背中を叩いた。

「被害が出てないなら出てないうちにさっさと行っちまえばいいだろ?」

なるほど。確かにそうだ。

彼女を捕まえて被害を最小限に抑えようと思ってたけど、

いなくなれば彼女だって何かしようが無い筈。

それに…彼女を捕まえられる筈がないか。

「そうですね」

笑い返し、急かす向日先輩の後に続いたのだった。








「あそこのラーメンはマジ美味いって評判なんだぜー♪」

うきうきと飛び跳ねながら進む向日先輩。

何であれで転ばないのか不思議だ。

「それに、今日から期間限定で何かすごいパフェ、が…」

「ぱ…」

「パフェ!?」

パフェの単語に過剰反応するメンバー。

たぶんその脳裏には同じ人物が浮かんでいるはずだ。

「お、俺、やっぱり行くのやめ…」

たいという言葉は最後まで言わせてもらえなかった。

「もしも行かなかったヤツはレギュラー落ちだ」

「え!?」

驚いてそちらを見ると、腕を組んで仁王立ちの跡部さんと諦め顔の忍足さん、

いつもと変わらずの樺地の姿。

忍足さんはともかく、何で跡部さんが…。

「オイ、跡部!何でレギュラー落ちなんだよ!関係ねーだろうが!」

全くもってその通りだと思う。

「そうですよ!それにパフェがあるところさんの影在りですよ!」

俺の言葉に眉間に皴を寄せる跡部さん。

やれやれと苦笑しながら前に出て来たのは忍足さん。

「…あんな、跡部はお坊ちゃまやから普通のラーメン屋で食べたことないねんて。

かて言ってこの跡部にマズイもんでも食わせたら明日から練習メニュー三倍やで?」

「ゲッ…。」

「それは…遠慮したいですね」

そんな理由で跡部さんが皆を行かせるわけがない。

行かなければ行かないでレギュラー落ち。

変なところに行こうもんならメニュー三倍。

イヤな板挟みにあからさまに顔を歪める。

氷帝の練習は半端じゃない。

それが三倍となると…軽く死ねる。

結局は…行かなきゃ行けないのか…。

「まぁ、諦めるんやな」

ポンッと俺と宍戸さんの肩を叩く忍足さん。

「オーイ!なーにやってんだよ。早く行こうぜ!」

既に着替えている向日さん。

事情を知らないらしい。

やっぱりご機嫌にぴょんぴょん飛んでいた。

彼女がいませんように…。

ティッシュよりも薄い期待を馳せながらがっくりとうなだれたのだった。










何だか意味不明に氷帝も絡んできました。
これからどうなるのか(*´∀`)アハハン♪
次回で、さんの正体が少しだけ明らかになるやも
……思わせぶりな態度大好きー








●戻り隊●

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