茱萸の木を見ると、
思いだしたくないことを思い出しそうな
そんな、嫌なノスタルジーに駆られる。
何か特別な思い出があるわけでもない
何か特別な思い入れがあるわけでもない
ただ
…あの赤は、血を連想させる
どこか暗い、闇を含んでいるような、赤。
木にぶらさがっているものも、
落ちてその実を弾けさせているものも
毒 々 し く て
たまに、だけれど
その根元で倒れてる自分を想像するのは
既に毒に侵されてる証拠なのかもしれない
けれど、
いつか来る
その日は、遠くない未来に必ず訪れる。
そんな予言めいた不思議な確信を抱いて
愛しい笑顔を想う。
「…ごめん、ね」
小さな呟きは
消毒液の臭いの闇に溶けた。
(この手術が失敗すれば、俺はなす術もなく死にゆくのだろう)
こわい
つらい
くやしい
どんなに大人ぶってみても
どんなに聞きわけのいい顔をしても
所詮俺は何の力も持たない、猥小なコドモだ
自分の無力と
未だ瞼の裏に残る紅を抱き
闇の中独り静かに哭け。
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茱萸=ぐみ
以前別ジャンルで書いていたものを
幸村闘病中の心中のイメージでリメイクしました。
…軽弾みに書いて良いようなものでもないとは思うんですがねυ
●戻り隊●
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